TOKYO TATEMONO
MUSIC OF THE SPHERES

ピアニスト、角野隼斗が音楽を通した様々な”出会い”を語る20分

TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES
2026.09.27
ピアニストの角野未来さんが登場!

9月27日の放送では、
ゲストにピアニストの角野未来さんをお迎えして、
ファーストアルバムのお話をじっくり伺いました。
兄妹の微笑ましいピアニスト対談をお届けしました。


*****


隼斗:今週はピアニストの角野未来さんが来てくださいました。
角野未来さん、こんにちは。

未来:こんにちは。

隼斗:私は、2人兄弟の兄でありまして、こちらが妹になります。

未来:はい、妹です。

隼斗:1年半ぶりぐらいですか?この番組には。
お忙しいなかありがとうございます。

未来:とんでもないです。

隼斗:角野未来さん、ピアニストとして、今フランス留学中で。今もういろんな場所でコンサートされて、大活躍中でございます。
最近どうですか?

未来:そうですね、最近はデビューアルバムが9月2日に発売になりまして。その曲を、プログラムに入れたリサイタルの準備だとか、ほかの演奏会の準備とか、いろいろやらせていただいております。

隼斗:デビューアルバム『Appels』?

未来:はい。

隼斗:『Appels』、どんなアルバムになったんですか?

未来:私が元々フランス音楽がすごい好きっていうところから、アルバムのお話をいただいて、1作目ということで、自分が一番よく取り組んできたものを、1作目にしたいなと思って。っていうのと、このメル・ボニスっていう女性の作曲家と出会って、取り組んでいた時期がちょうど重なったので、日本では全然こう知られていなくて、録音もないので、せっかくならこう取り上げたいと思って、ボニスを中心に組んだプログラムで、フランス音楽アルバムとなりました。

隼斗:前回来てくれたときも、メル・ボニスの話をしてくれたと思うんだけど、これ「メル・ボニス」だったの?

未来:え、何だと思ってたの?

隼斗:メルボニスっていう、アルベニスみたいな、ザック・アルベニスみたいな感じ(笑)。

未来:あー、なるほどね、ボロディンみたいなね(笑)。

隼斗:苗字かと思ったら、メルがファーストネームで、ボニスがラストネームってこと?

未来:そう!実はメラニー・ボニスっていうのが本名で、メル・ボニスっていうのはペンネームで。当時女性作曲家が、作曲家として認められるのが難しい時代だったから、メラニーっていう名前を中性的に文字って「メル」って名乗って。でも、いい語感ですよね、メル・ボニス。

隼斗:いい語感、覚えやすいし。メル・ボニス、どんな作曲家ですか、改めて?

未来:メル・ボニスっていうのは、フランスの女性作曲家で、フランスを代表する作曲家のドビュッシーと同級生だったんですね、パリ音楽院の和声クラスで。さっきも言った通り、女性が作曲家になるっていうのはなかなか認められてない時代で、すごくいい成績を収めて先生からも期待されていたんですけれど、両親の反対があって学校をやめることになって。25歳年上の、お金持ちの男性とお見合い結婚することになって、家庭に入るっていう中で、同世代の、一緒に勉強してきた仲間たちがどんどんキャリアを、築いていく中で、自分は家庭に入って、女性としての制約の中で生きてきたっていう背景があって。そんな人が、「伝説の女たち」っていう、7人の伝説上だったり文学上、歴史上の女性たちの名前をそれぞれ冠した曲を作っているっていうところに、すごく興味深いなっていうところから入って。
ボニスは自伝の中で、音楽はその作曲者の魂を表すものだ、本質を表すものだっていう風に言っていて。そう言うことを言っていた人が、「伝説の女たち」を書いたっていうことに、意味深いなっていう風に思って。

隼斗:すごい強いタイトルだね、そう思うと。

未来:そうですよね。「伝説の女たち」っていう名前をつけたのは出版社で、本人じゃないんだけど。でも、自分の人生の中で、女性キャラクターっていうものをテーマに、曲を作り続けてきたっていうことが、「女性である」っていうことに、すごく強い意識を持ってたんじゃないかなって思って。

隼斗:そういうところが惹かれた理由であると。

未来:そうですね。バイオグラフィーを見るだけでもすごくドラマチックで。音楽院をやめさせられた理由が、同級生の歌の生徒、男の子と恋仲になって、でもやっぱり音楽家との結婚は絶対認められないっていうことで、音楽院をやめさせられて、お見合い結婚させられて。自分の個人的な願望も、作曲家としてのキャリアも、いろんなものを諦めてきたっていう人が、7人の選んだキャラクターもそれぞれ、いろんな辛い運命を背負った人物たちで、そういう人物に自分の思いだったり、憧れとか苦しみみたいなものを投影してたのかなと思って、演奏してると本当にそういうことも感じるから、弾く意義がある曲だなと思って。

隼斗:まさに。レコーディングはどこでやったんですか?

未来:ソニースタジオでやりました。

隼斗:乃木坂の?

未来:はい。

隼斗:いつも行ってる(笑)。

未来:前日にお兄さんがここで録音してましたって言われて(笑)。「あ、そうなんだ」みたいな。

隼斗:いつだ?(笑)いや、でもよく行ってる。

未来:同じピアノだったらしい。

隼斗:同じピアノ。今年?

未来:うん、2月くらい。

隼斗:2月くらい。あー、いいね。どうだった?

未来:スタジオ録音って初めてだったから、やっぱり響きがないところでやるっていうのもすごい新鮮だったし、めちゃくちゃいいスピーカーで自分の演奏したものを聴くっていうのが、すごい恐ろしかった(笑)。

隼斗:恐ろしいよね、音ね(笑)。

未来:もう恐ろしい!もう恐くて、「あ、こんな風に弾いてたんだ」って(笑)。だから、落胆と発見の連続みたいなっていう感じでした(笑)。

隼斗:落胆と発見の連続(笑)。大変ですね。僕もそうで、ピアノソロをレコーディングするのって、本当、今言ったような感じなわけ。

未来:そうだよね。

隼斗:これがほかの楽器がいたり、バンドだったりオーケストラがいたりすると、例えば自分が作曲したものとかは、いろんな楽器で音楽になって、単純に楽しめるんだけど、自分で弾いてると、楽しめる感じではない。

未来:楽しめる感じじゃないよね。突きつけられてる感じだよね(笑)。

隼斗:ぐっ……ぐっと(笑)。

未来:「これが、お前である」って(笑)。えぐられながら、なんとかそれを頑張って直視しながらやるっていう感じだったね。

隼斗:気を付けながら録音してましたか?

未来:でも、やっぱりリサイタルの高揚感の中で、ひとつの流れに乗って弾いてたところが、すごくいいスピーカーで改めて聴いてみると、細かく分解して聴こえてくるじゃん。高揚感で掻き消されていたものが(笑)。そういうものが、「あ、もっともっとこう細部まで」……例えばフレーズの終わりの、消えていく余韻だったりとか、間の取り方とか、そういうものがすごい新鮮に見えてきて、とっても勉強にはなりました。

隼斗:なるほど。それさ、録音するときに、最終的なリバーブ込めたものを聞きながら弾く派?それとも、スタジオの生音を聞きながら?

未来:ヘッドフォンしながらってこと?ヘッドフォンしながら取ったやつもあるし、生音で取ったやつもある。

隼斗:じゃあ曲によってこっちが良い、こっちが良いっていうのが変わったんだ。

未来:変わった。あと……最初リバーブ聴きながらやって、収録したものを聴いて、もう一回生音で取り直したっていうのもある。

隼斗:難しくない?

未来:いや、難しかった。やっぱりヘッドフォンつけてると単純に弾きにくいし。でも、生音で弾くと、リバーブかけたときに「なんか違う」みたいになるし。

隼斗:だってさ、スタジオの響きをフィードバックしながら、耳で引いてるわけだから、その間のさ、タイミングとかペダルの踏み具合だってさ、そりゃ変わるじゃないですか。
未来:そうなんだよ。だからすごい難しくて。やればやるほどさ、「あ、ここも!ここも!」みたいになっていくじゃん。それのバランスがすごい難しかった。

隼斗:そうですね。お疲れ様でした。

未来:ありがとうございました(笑)。

隼斗:でも良いアルバムになりましたか?

未来:いや、本当におかげさまで、初めてのレコーディングで何も分からへんところから……

隼斗:初めてか。

未来:はい、だったので、プロデューサーの渋谷さんとか、エンジニアの皆さんに、いろんなことを教えていただきながら、できたので、本当に良かったです。

隼斗:それは良かったです。
この『Appels』というのはどういう意味なんですか?

未来:『Appels』はフランス語で、呼びかけとか呼び声みたいな意味があるんですけど。最初にこれを思いついたのは、メル・ボニスのこの作品も、ドビュッシーの『喜びの島』『月の光』と、そして『夜のガスパール』も、ここではないどこか違う場所への問いかけているような、そして問いかけられているような、異世界への繋がりみたいなものが、あると思っていて。その遠い世界への憧れだったり、そういうものからの「呼びかけ」っていうのが思いついて。自分も曲を演奏するときに、その曲からインスピレーションを得て、呼びかけられて、演奏して……。

隼斗:じゃあこの『Appels』は、角野未来が呼びかけているというより、呼びかけられているという……

未来:そう!それであって、これは想像なんだけど、お兄ちゃん作曲するから、聞いてみたいけど、自分が作曲者の視点からしても、何かインスピレーションを受けるものがあるときに、何かから呼びかけられて、インスピレーションを得て、書き下ろしていくっていう、プロセスがあるんじゃないかと想像して……

隼斗:もちろん。

未来:あ、そうでしょ(笑)?やっぱり?で、その作品から、演奏者は呼びかけられて、その演奏によって聞いてる人に呼びかけていくみたいな、そういう繋がりになるのかなと思って。

隼斗:呼びかけの連鎖(笑)。

未来:そうそうそう(笑)。呼びかけの連鎖が(笑)。で、『Appels』っていうのは、「s」をつけて複数形にして。

隼斗:あー、発音しないもんね。

未来:そうなんです、フランス語だと「アペール(Appels)」になるんですけど。っていうところから、アルバムとレーベルのタイトルになりました。

隼斗:パッと見たときに「Apple」かと思って……

未来:そうなのよ(笑)!いろんな資料とか作るじゃん。で、「Apple」になってないかどうか確認するのがすごい大変で(笑)。

隼斗:これは間違える。これだけ字面似てたらさ。

未来:そうなの(笑)。

隼斗:めっちゃ「Apple」だもん(笑)。

未来:そうそうそう。それはね、致し方ない。

隼斗:致し方ないね。『Appels』ということで。そろそろ時間になってしまったので、そんなデビューアルバム『Appels』発売中ですというのと、ほかに知らせがあれば。

未来:リサイタルツアーをしてるんですが、9月30日に浜離宮で、東京公演、最終公演があるので。

隼斗:浜離宮朝日ホール。

未来:はい。ぜひお越しいただけたらと思います。

隼斗:9月30日というのは、これはたまたまですか?狙ってますか?

未来:何のことですか?

隼斗:未来さんの誕生日じゃ……

未来:あ、よくご存知で(笑)。

隼斗:白々しいな(笑)。

未来:たまたまホールを見て開いてる時期を見て、土日が空いてなくて、じゃあ平日ってなった時に「あれ?じゃあこの日がいいかな」ってなって(笑)。恥ずかしいです、ちょっと(笑)。そんな大々的に言ってないんですけど。

隼斗:堂々といきましょう(笑)。未来さんには来週も登場いただけます。来週もよろしくお願いします。

未来:ありがとうございました。


*****

BACK NUMBER